ヘイトスピーチを考える際に役立つ既刊書籍のご案内

嫌韓・嫌中本が話題になる昨今、出版社・書店からもヘイトスピーチを見直そうという動きが出てきています。
ヘイトスピーチ書籍が相次いで発売。「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」が結成され、
7月にはシンポジウム「『嫌中憎韓』本とヘイトスピーチ―出版物の『製造者責任』を考える」が開かれました。*1



三省堂書店神保町店さんでは、これらの動きに呼応したフェア
「国境線を越えて〜言葉だけじゃ心は伝わらないか?」が開催中です。
花伝社発行の!齋藤一晴『中国歴史教科書と東アジア歴史対話』
もラインナップに加えていただきました。小柳様、いつもありがとうございます!
  



ここで、この問題を考える際に役立つような書籍を、他社さんの発行物を含め、いくつかご紹介しようと思います。



●花伝社書籍から●



俵義文『<つくる会>分裂と歴史偽造の深層』「つくる会」分裂と歴史偽造の深層―正念場の歴史教科書問題
(ISBN: 978-4-7634-0512-8、本体 1000円)
……<つくる会>の歴史偽造について検討したブックレット、現在につながる歴史修正主義の萌芽を分析




矢吹晋チャイメリカチャイメリカ―米中結託と日本の進路
(ISBN: 978-4-7634-0635-4、本体2200円)
……対中国のための日米同盟が欺瞞であることがわかる1冊。
「米中関係「世界で最重要」 ケリー国務長官」という報道もあります(産経新聞、11月5日)。




村田忠禧『日中領土問題の起源』日中領土問題の起源―公文書が語る不都合な真実
(ISBN: 978-4-7634-0668-2、本体2500円)
……日本政府が主張する尖閣諸島領有の根拠が誤りであるとわかる1冊。
他国の言い分を冷静に聞く視座を与える。著者は共同管理論を主張しています




アンドレイ・ランコフ『民衆の北朝鮮民衆の北朝鮮―知られざる日常生活
(ISBN: 978-4-7634-0560-9、本体2400円)
……イメージではない、北朝鮮の「実情」に迫ったルポルタージュ。著者はロシア人。




財津昌樹『言いたいことを言ってしまう。と、どうなるんだろう』言いたいことを言ってしまう。と、どうなるんだろう
(ISBN: 978-4-7634-0684-2、本体1300円)
……日本を代表するグラフィックデザイナーである著者が、
ヘイトスピーチなどに危惧を覚え、制作したポエム集。やさしいことばで伝える。



宇都宮健児『希望社会の実現』希望社会の実現
(ISBN: 978-4-7634-0690-3、本体1200円)
……「ヘイトスピーチを許すな」(62頁)収録。






花伝社の発売元・共栄書房の書籍から●



倉橋正直『従軍慰安婦公娼制度』
(ISBN: 978-4-7634-1040-5、本体2000円)
従軍慰安婦問題の歴史的研究』
(ISBN: 978-4-7634-1018-0、本体1800円)
『北のからゆきさん』
(ISBN: 978-4-76341026-1、本体1800円)
従軍慰安婦と公娼制度―従軍慰安婦問題再論 従軍慰安婦問題の歴史的研究―売春婦型と性的奴隷型 [rakuten:hmvjapan-plus:10950474:image]
……朝鮮日報社説でも取り上げられた従軍慰安婦関連研究書。






張赫宙『秘苑の花』李王家悲史 秘苑の花
(ISBN: 978-4-7634-1060-3、本体2200円)
……天皇のお妃候補にあがったのち、李朝最後の皇太子に嫁いだ方子さんについての小説。
知られざる日韓近代史とそこで慎ましい友好を結んだ人々を通じて、新たな日韓交友の方法をさぐる手立てに。




李王垠伝記刊行会『英親王李垠伝』英親王李垠伝―李王朝最後の皇太子
(ISBN: 978-4-7634-1027-x、本体2500円)
……戦争の中、日本と韓国の狭間で翻弄された李朝最後の皇太子、李垠の記録。






●他社さんの書籍から●



金尚均編『ヘイト・スピーチの法的研究』ヘイト・スピーチの法的研究
(ISBN: 978-4-589-03618-6、本体2800円)
……法律文化社さんの新刊!研究者の方の間で噂になっている一冊です。




小森陽一・高橋哲也編『ナショナル・ヒストリーを超えて』ナショナル・ヒストリーを超えて
(ISBN: 978-4-13-003313-8、本体2700円)
……1998年発行、東大出版会。弊社S推薦。
「歴史をどうとらえるか? 歴史的事実をどう語るか? メディアを流通している〈歴史観〉のレイシズム,セクシズム,
リヴィジョニズムなどに対して,大学を中心とする知の領域から鋭く問いかける批判の書.開かれた歴史意識への誘い」





永井荷風断腸亭日乗摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫) 摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)
(ISBN: 978-4-0031-0420-0、本体900円)
……古典的な一冊。戦前・戦中・戦後を通して「ヘイトスピーチ」に惑わされなかった
永井荷風の生き方に、今も学ぶことは多い。こちらも弊社Sの推薦。





六月十八日。
芝口辺米屋の男三、四年前召集せられ戦地にありし時、漢口にて数人の兵士と共に或医師の家に乱人したり。この家には美しき娘二人あり。医帥夫婦は壺に入れたる金銀貨を日本兵に与ヘ、娘二人を助けてくれと歎願せしが、
兵卒は無慈悲にもその親の面前にて娘二人を裸体となし思ふ存分に輪姦せし後親子を縛って井戸に投込みたり。かくの如き暴行をなせし兵卒の一人やがて帰還し留守中母と嫁とを預け置きし埼玉県の某市に到りて見しに、
二人の様予出征前とは異り何となく怪しきところあり。いろいろ様子をさぐりしがその訳分明ならず、三月半年はど過ぎし或日の事、嫁の外出中を幸その母突然帰還兵士に向ひ、初めは遠廻しに嫁の不幸なることを語り出し、
遂に留守中一夜強盗のために母も嫁もともども縛られて強姦せられしことを語り災難と思ひ二人の言甲斐なかりしこと許せよと泣き悲しむところヘ、嫁帰り来りてこれも涙ながらにその罪を詑びたり。かの兵士は漢口にて支那の良民を浚辱せし後井戸に投込みしその場の事を回想せしにや、はどなく精神に異状を来し、戦地にてなせし事ども衆人の前にても憚るところなぐ語りつづくるやうになりしかば、一時憲兵屯所に引き行かれ、やがて市川の陸軍精神病院に送らるるに至りしといふ。市川の病院には目下三、四万人の狂人収容せられゐる由。
永井荷風断腸亭日乗』下巻より)

(山□)

*1:*ころから社さんより、『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』として書籍化