荻上チキさん絶賛!『見えない違い――私はアスペルガー』
先週発売した、ジュリー・ダシェ原作、マドモワゼル・カロリーヌ作画、原 正人翻訳
『見えない違い』
- 作者: ジュリーダシェ,Julie Dachez,マドモワゼルカロリーヌ,Mademoiselle Caroline,原正人
- 出版社/メーカー: 花伝社
- 発売日: 2018/08/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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さっそくご好評いただいています!
イラストかわいくて、つらさやしんどさや気持ちが視覚化されてわかりやすくて、とてもよかったです。『見えない違い 私はアスペルガー』ジュリー ダシェ ☆5 https://t.co/KC5QasiX0t
— さくらぶ/桜麩 (@cherryboou) 2018年8月27日
バンド・デシネの『見えない違い 私はアスペルガー』、読みながら「わかる〜〜!!!」ってなってた
— hirosi41 (@ikarinogankyu) 2018年8月28日
花伝社のバンド・デシネ 「見えない違い」を読んだ。
— MAEDA (@rm1ine) 2018年8月29日
素敵な本だった。
自分の苦しさを周りに理解してもらえない所からくる「孤独」の表現と診断がおりてから世界に色がおびはじめる所が表現として面白かったし、作者の気持ちを表す良い表現になっていた。
「見えない違い 私はアスペルガー」個性や性格で片付けられてきたことが症状として名前が付く、正しく認識されることで自由になれるし救われる。自覚なく彼女に無理を強いてしまっていたある人との別れの告げ方は少し一方的で残念だったけど、彼女の息苦しかった世界が広がりを見せていくのがよかった
— mura (@miki_mura) 2018年8月29日
『見えない違い 私はアスペルガー』読了。27歳のマルグリット、不動産会社へ勤め、恋人もいるが、常に生きにくさを抱え気持ちは晴れない。決まった手順を踏むこと、静かな場所、一人でいることを好む。大勢の中で過ごすこと、他人に合わせること、騒がしい場所は苦手 pic.twitter.com/AUMafghT3z
— 竹崎伸司 Takesaki Shinji (@TakesakiShinji) 2018年8月28日
さらに昨夜(8月29日夜)放送の「荻上チキ・Session-22」で、かの荻上チキさんが絶賛してくださいました!
【音声配信】最近面白かった「バンドデシネ」について、荻上チキが紹介しました!
▼2018年8月29日(水)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)
https://www.tbsradio.jp/288433
あまりに嬉しかったので、メモとして文字に起こしてみました。
荻上チキさん:最近読んだ漫画の中で面白かったのは、海外のバンドデシネの一冊なんですけれども、
南部広美さん:フランス、ですよね?
荻上:そうですね。僕が、この番組でいろいろアメコミとか――アメコミと言っても、全然ヒーローものだけじゃなくて、様々な作風なものがあるんですね。社会派のもの。
南部:あらゆる。
荻上:で、アメコミと言うからにはアメリカなんですけれども、アメコミ以外のいわゆる「洋コミ」といいますが、海外コミックというのはいろいろあって、面白いものもたくさんありますよ、という話をしていたところ、出版社の人から「こんなものもお好きじゃないですか」ということで、送っていただいたバンドデシネがあって、それがもうドンピシャで面白かったので――。
南部:どんな?
荻上:
『見えない違い――私はアスペルガー』
というタイトルの漫画なんですけれども、タイトルからも分かるように、アスペルガー症候群。まあ、いま「アスペルガー」って過去の言葉になりつつありますけれども、自閉症スペクトラム障害の一人の女性が、日々、自分の病気が何なのかということもわからず、とにかく職場とか人間関係とか、いろんなところで生きづらさを感じているわけですね。で、なんだか職場にいるとそれだけでとても疲れる。
なぜなら、どうもこの主人公の女性は、聴覚過敏という、発達障害・自閉症スペクトラムの人に起きがちな一つの障害というか特徴がありまして、それは私がいまこうやって話していれば、健常というか「定型発達」とされる人たちというのは、僕の声をそばだてて聞く、あるいはいろんな音が鳴っていてもラジオは耳に入ってくるとか、そういうことができたりするわけですけれども、聴覚過敏だったり、あるいは聴覚の情報処理がうまくいかない場合ですと、いろんな音がどんどんフラットに聞こえてしまう。
南部:どんどん入ってきちゃうということですね?
荻上:そうですね。情報に対するピントのしぼりというものが、なかなかうまくいかないということが――
南部:フォーカスの当て方が難しい……。
荻上:自閉症スペクトラム障害の、よくある症状の一つなんですけれども、それが耳で起きると私のこの喋りも、例えばこのペーパーノイズ(紙を触る音)を同時に喋りながら発していたときに、このペーパーノイズを無視していただきながら声を聴くのが通常の聞き方だと思うのですが、これがフラットに、同時に聞こえてくることになる。
そういうような状況だと、例えばパーティーで目の前で喋っている人が「いやあ、この前さ」と話している背景で、ワイワイガヤガヤ、グラスの音だとか、注ぐ音、食事の音、紙の音など――
南部:BGMとか。
荻上:もろもろが聞こえてしまうので、ただその場にいるだけで、他の人よりもはるかに疲れるんですね。
でも、そのことが理解されないから、「付き合い悪いね」とか「空気よめないね」とか――。
南部:そうかそうか、その人の中で起きていることが、外側にわからないから、周りの方も気が付かないということなんですね。
荻上:よく「見えない障害」という風に言ったりするわけですけれど、このバンドデシネでは『見えない違い』というタイトルで、その女性の生き方というものを描いていくわけですけれども、けっこう啓蒙的であるのと同時に、でも、多くの人たちが感じている――つまり、自分が発達障害でなかったとしても、でも「こういったことって生きづらいよね」っていうようなことを感じるときに、一つのあるある話というか、それをどう克服すればいいのかとか、周りの無理解への憤りとか、そうしたものを漫画ならではの表現で上手に描いているんですね。
漫画ならではの表現というものは、やっぱり、他のメディアではできないような描き方。つまり、イラストと絵が漫画をつくるわけじゃないですか。
南部:平面と言うか、二次元というか――。
荻上:だけど、その、ちょうどフラットにすべての音が聞こえてしまう様というのを、例えば、セリフだったら吹き出しでその人のセリフだとわかるわけですけれども、主人公のマルグリットという女性の目線から見ると、すべての音が「ぐわーっ」って、全部が吹き出しを超えて、セリフとして自分に襲いかかってくるシーンとかを、上手に的確に描いていたりするわけですね。
的確にと言うのは、「当事者から見たらこう見える」ということも当然あるでしょう。この原作者というのは、実際に(アスペルガー)当事者であって、その体験をベースにしたのがこの漫画ということになっているので、そうした体験から見えてくるリアリティを、漫画という一つの手法に上手に落とし込んでいる。
当然ながら、漫画好きにとっては、海外、特にフランスの漫画であることから、普段、日本の漫画では見ることのないいろんな表現に触れることもできるわけですね。そして、発達障害の当事者だけに限らず様々な人が、他の世界から見た、他の人から見た空間は、こういう風に映るんだとか、そういったことを体感することができるという一つのリッチな作品だったので、読めてよかったなあという風に思っています。
南部:読みたいなあと思いましたよ。
荻上:ちょうどこれが発売ほやほやで、今月の最終週ぐらいに発売――先週とか今週とかに発売したっていう格好になるわけですね。(8月25日発売)
出版社は「花伝社」というところなんですけれども、よく「ここはアメコミとか、海外の本を出版しているよね」というところはいくつかあるわけですよね。例えば小学館はこれに強いとか、例えば「ビレバンブックス」のやつはこうだとかいう特徴があるわけですけれども、他にも意外なところがこういったコミックスを出していたりするんですよね。
そうしたことを知ると、とてもうれしく思いますし、そうしたような仕方で多様な作品に触れられるのは嬉しい限りなので、大変ありがたいですね。
ちなみに翻訳は、原正人さんが訳されているので――以前バンドデシネ特集の案内人をしてくださいましたけれど――安定の、「間違いないな」っていう。翻訳者買いというのは、漫画だけじゃなくて本は、あります?
南部:ありますね。
荻上:この訳者が訳す本だったらきっと目のつけどころがいいんだろうな、とか。そういった買い方でもいいんでしょうけれど。せっかく読んだ本だったので、面白さのおすそ分けということで、オープニングで紹介してみました。
荻上さま、ありがとうございます!
お読みになられた方のご感想など、お待ちしております。
内容についてさらに知りたい方は、訳者の原正人さんによるご紹介をご覧ください。
花伝社では引き続き海外コミックを刊行する予定です。
次回は、スウェーデンの、フェミニズム(ギャグ!)コミック『世界の起源』(仮)。
年内刊行予定です。お楽しみに!