『ゴッホ 最後の3年』が刊行されるまで
ブログの更新が空いてしまい申し訳ありません。 前回更新した『見えない違い』は、おかげさまで重版になりました!!!海外コミックは2連続で増刷し、一人の海外コミックファンとして、とても嬉しく思っております。
さて、この度、海外コミック第三弾を刊行しました! その名も
新刊『ゴッホ 最後の3年』が刷り上がりました!オランダをはじめ20カ国で愛されているコミックです。たくさんの作品も登場し、ファンの方にはたまらない一冊。ぜひお読みください!11月25日頃発売予定です。 pic.twitter.com/RGJY3B5Ukx
— 花伝社 (@kadensha) 2018年11月15日
- 作者: バーバラストック,Barbara Stok,川野夏実
- 出版社/メーカー: 花伝社
- 発売日: 2018/11/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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刊行前に作者のバーバラ・ストックさんからは、こんな素敵なイラストをいただきました。
※書籍に載せそびれてしまいました、ごめんなさい!!!
さて、どうして『ゴッホ』を刊行することになったのか、長くなりますが記しておきたいと思います。
時を遡ること、5月。ゴールデンウィークで帰省したので、お世話になっているS社の編集者Sさんにお土産を買ってきました。帰りがけに会社に寄ってお渡ししようかな?と思い連絡をすると、「今から御社に行きます」とのこと。
「どうして、わざわざ会社に来てくれるのかな……?」
と思ったのもつかの間、やってきたSさんから話を聞いてみると、Sさんは「オランダ文学基金」なる人と会った帰りで、「オランダ文学基金」の人がくれたというグラフィック・ノベル(コミック)のカタログを持ってきてくれたのでした。ちょうどその頃、「オランダ文学基金」の方々が来日中で、しかし、たくさんの出版社を回られているし、それほど長くは滞在しないとのこと。「絶対に会ったほうがいい」と勧めるために、わざわざ会社に寄ってくださったのです(ありがとうございますー!)。そこでさっそく、教えていただいた「オランダ文学基金」なる方々のところに連絡を差し上げたところ、唯一空いていたという翌日のランチの時間に同席させていただくことになりました。
「オランダ文学基金」(Dutch Foundation for Literature)とは、オランダ政府によって運営されている基金で、オランダの書籍を世界中に紹介するだけでなく、例えば谷崎潤一郎のオランダ語訳などを積極的に進めているそうです。私がSさん経由でいただいたカタログの他にも、絵本や社会科学、自然科学などの分野で、おすすめの書籍の情報や版権状況などを詳細に記したパンフレットを多数制作されています。
また、翻訳者の養成や紹介にも力を入れておられ、公認の翻訳者による翻訳に対し、一定の翻訳費や制作費の助成を支給してくださる本当にありがたい存在です。(ということをその時に知りました。)
実際にお会いするまでは、私はどちらかというと、『タンタン』のような絵柄で描かれたインドネシアについてのコミックに関心があったのですが、実際にお会いし、オランダ文学基金のAさんが「絶対に、このコミックがおすすめです!」と勧めてくださったのが、『ゴッホ(原題はフィンセント)』だったのです。
その時点で、浅学非才な私の、ゴッホに関する知識は、
- 耳を切った
- ゴーギャンと仲が良い(?)
- 南フランスで活動していた
- ひまわり
ぐらいなもので、「えー!オランダの人なのー!?」という驚きがスタート地点でした(すみません……)。
(ところでここ数年で私の友人は何人もオランダに魅せられ、移住した人もいて、「これからはドイツより、断然オランダ!」という話を聞くこともしばしば……。私のデスクの上には、オランダに留学した先輩からいただいた「JIJ HEBT EEN HART VAN GOUD!」(あなたは金色のハートの持ち主!)というカードを飾っています。冒頭のS社のSさんもその後オランダに旅行され、帰国後に美しい写真をたくさん拝見し現地の材料でつくった美味しい料理をごちそうになりました。)
さて、オランダ文学基金のAさんがこの本を勧めてくださったのには、いくつか理由がありました。
- 世界20カ国近くで刊行されていて、韓国ではブランドがこのコミックのカバンをつくるほど人気なのに、日本では刊行の予定が立たないでいたこと。(作者のバーバラ・ストックさんは日本を舞台にしたコミックも描いておられます。)
- 従来ゴッホには「悲劇の画家」のような、可哀想なイメージがあったけれども、このコミックは、実際の手紙などをもとに、弟テオとの絆を中心に描き、ゴッホが持っていた希望やビジョンに焦点をあてたものであること。
確かに日本人はゴッホが好きだけれども、彼の人生の細かい部分についてはまだ知られていないのではないか(自戒を含め……)。それに、ゴッホの手紙(も名著だけれど)を単独で読むにはハードルが高いけれど、マンガの中だったら読めるのではないか……。絵柄も素晴らしいし、ぜひ日本で刊行したい! 弊社がすすめてきた読み物としての海外コミックの紹介にも、ものすごくマッチすると考え、何よりAさんの熱意に押され刊行をすることになりました。すでに翻訳者の川野さんの素晴らしい訳文が半分ほどできていたので(とはいえ多大なご負担をおかけしながらも)、サクサクと進行し、半年ほどで発売にいたりました。
ところで編集の過程で問題(?)になったことがあります。それは、
弊社の営業部長がゴッホが大好きだったということです!!!
営業部長によるゴッホの解説を聞くにつれ、『フィンセント』をそのまま翻訳しただけでは、日本のコアなファンに太刀打ちできない! せっかくのアムステルダム・ゴッホ美術館監修コミックなのに、どうしよう!という恐怖感をいだき、夢にうなされました。このコミックには多数のゴッホの作品や書簡が織りこまれているのですが、思い切って原作にはない作品名や書簡の番号を入れることで、作品ガイド・書簡集としても読めるような本にしようと方向転換し、多数のゴッホ解説本を読み漁りましたが、ともかく書簡の文章が素晴らしく(そのほとんどがお金の話であるのも事実なのですが、それも含めて深く共感しました……)、デクスで泣いてしまいそうになることもしばしばでした。川野さん(今回が初の翻訳書です!)の翻訳も素晴らしく、「ホタルの髪留め」の話や、「穀物」の箇所など、ぜひぜひ実際にお手にとって読んでいただきたいです。
こう毎日ゴッホの作品や文章と向かい合っていると、どうしようもなく好きになってしまい、現物を見に行きたくなっていたところ(実際に西洋美術館には何回も足を運びました)、素晴らしいニュースが!
ぜひ皆さまも『ゴッホ 最後の3年』を読みながら、現物の作品を何倍も楽しんでいただけたらと思います。
『ゴッホ 最後の3年』の中身については、詳細なレビューをいただきました!
ゴッホ―最後の3年 ☆アメコミ以外も紹介#1|おそばBOYうどん太|note(ノート) https://t.co/QkuPdTpWwH
— 花伝社 (@kadensha) 2018年12月5日
繰り返しになりますが、ぜひぜひぜひぜひご覧ください!
(山口)