【既刊紹介/社会問題シリーズ①】 関谷大輝『あなたの仕事、感情労働ですよね?』

こんにちは、営業部の白井です。

今回の紹介書籍は、心理学者の関谷大輝先生(@Dr_OWAP)による『あなたの仕事、感情労働ですよね?』です。

ブラック企業」が問題視されるようになって久しく、チェーン店のアルバイトから大企業の正社員まで、多くの人が自らの働き方に頭を悩ませストレスを抱えている現代社会。社会全体がこの課題に直面し、様々なアプローチで労働のあり方が問い直されているいま、本書は「感情労働」=「仕事をする上で感情をコントロールする必要がある職業」への対処法をテーマに、働く人の心についての考え方を示し、ストレス解消に向けて実践することのできるメンタルケアを提案します。

本書では現代社会における仕事のほとんどは感情労働的な性質を持ち合わせているとされていますが、このことは多くの人が経験的にお分かりかと思います。例えば、自分の気分とは関係なく笑顔を見せなければならない、怒りたいのに我慢しなければならないなどは、サービス業をはじめとしてよくあることではないでしょうか。こうした状態は、本書では「感情的不協和」と説明され、仕事上のストレスの主な原因とされています。そして、そのストレス原因を仕事のあとに思い出すことで発生する「副次的感情」によってさらにストレスを上乗せしてしまう場合もあり、関谷先生はこれを「感情労働のお持ち帰り」と呼んでいます。

心が疲れている人がとても多い――現代社会ではそんなことを誰もが直感的に感じているのではないでしょうか。かといって、感情労働的な性質をすべての職業から今すぐ取り除くことは、現実的に考えて不可能でしょう。そこで、関谷先生は感情労働の対処法を、「ラインケア」と「セルフケア」に分けて紹介されています。
組織全体での対策である「ラインケア」で最初にできることは「ストレスチェック」で、2015年の法改正により義務化されています。ストレスチェックによって業務中の「感情的不協和」が可視化できるわけですが、このままだと事後対応にとどまります。ストレスによる心身の疲労がたまると、ストレス解消のエネルギーさえ削がれてしまうと本書で指摘されています。なので、「まだ元気なうちから積極的にストレス解消をする」ために、会社全体で有給休暇の取得率を向上させることを第一次予防としています。
個人で取り組む「セルフケア」の方法も本書では紹介されていますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

皆さんは仕事を通じた日々のストレスについて、あるいは自分の心の状態について、きちんと考えたことはありますでしょうか?
ストレスの原因は百人百様です。その人の仕事、職場の人間関係、立場、そして性格によっても大きく異なってくるでしょう。それと同様に、ストレスケアにも「これが正解」という絶対的な方法はないと、関谷先生は述べられています。
ただ、本書には、飲食店の店長や店員、警察官、教師、市役所職員、駅員、医師といった、いろいろな職業に従事する感情労働者の「生の声」が掲載されています。もしかしたら「この人と自分は同じだ」と感じる言葉が見つかるかもしれません。

ともあれ、仕事のストレスは、最悪の場合にはメンタルヘルスの問題となって働く人を苛みます。最終的には休職や退職にまで追い込まれるケースも少なくありません。
本書がこうした不幸を少しでも減らす一助になればと思います。関谷先生がおっしゃるように「敵(感情労働)を知ること」は、この社会を上手に生き抜く大きなヒントになるはずです。

関谷大輝先生のHP⇒http://d-sekiya.wixsite.com/sekiya-lab

アマゾン⇒https://www.amazon.co.jp/dp/476340797X