本文組版を巡る変化

前回本の装丁のことが紹介されていましたので、今回は本文レイアウト(組版)のについて書こうと思います。まず小さなお知らせですが、花伝社に久しぶりに新書体が入りました。これから出版される本に徐々にお目見えするかと思います。

新書体が導入されたので、色々と本文組のレイアウトを考えてみる機会がありました。同じ書籍の組版でも書体を変えてみると、ずいぶんと雰囲気が変わることがあります。タイポグラフィのおもしろさでもあります。花伝社では社内でMacを使用してDTP(Desktop publishing、デスクトップパブリッシング、日本語では卓上出版とも言うそうです)を行っていますので、書体を変えてみたいと思えば、即座に変えて確認することができます。今でこそ豊富な書体を選びだし、自由に変形させたり色をつけたりと好きなように試してみることは簡単にできますが、以前はそれだけでも大変な作業で時間がかかりました。私が出版社で仕事をし始めた頃は、まだ印刷会社や写植屋さんで組版をしてもらうことが当たり前、「級数表」や「歯送り表」などを見て「写植指定」を行っていました。写研の書体見本帳からこれでもない!あれでもない!と四苦八苦して書体を選んで、できあがりを想像して原稿に指定を入れてことを懐かしく感じます。

花伝社のDTPではPageMakerというソフトを経て、現在はInDesignというソフトを使っています。InDesignの導入によって、以前より精度の高いきれいな縦組みの組版ができるようになりました。専門的な話になりますが、MacOS X以降はOpenTypeフォントが標準となり、使用できる異体字や記号類が飛躍的に増えたことが作業する上で大きなメリットになりました。花伝社では様々な分野の書籍を出版していますのでテキストデータからすんなり組版へ・・・という訳にはなかなか行きません。外国語をはじめ、時には数式、化学式等々色々な組版に対応していかなければなりませんので、OpenType+InDesignという組み合わせは革命的に作業効率のアップとなっています。
この十数年で写植→MacintoshによるDTP と、書籍組版を巡る著しい変化があったのですが、書籍を手に取る読者の方々にはあまり関係ない出来事かもしれません。あれ?本の雰囲気が少し変わったかな?くらいの変化でしょうか。

この十数年の間のめまぐるしい変化を考えると、今のDTPが完成型だとも思えません。これからも変化し続けることでしょう。作業行程は変わったとしても、基本に忠実に読みやすく美しい組版の書籍を読者の方々に届けたいと思います。(杉浦)